すみません、ちょっと拍手レスはまた今度で

 道徳価値が崩壊している。

 7歳の頃を思い出す、家が汚くて友達が呼べなかった。妹は構わず足の踏み場もない家で、友達と騒いだ。
 小学校高学年、友達に呼ばれて、バレンタインチョコを作りに行った、楽しかった。そこでその子のお母さんは言った「今度は美奈ちゃんのおうちで作ったら?」。迷惑がらているのを知った。彼女は自分の家ばかりが、子供の訪問という面倒を被るのはフェアではないと思っていた。言われていなくても分かった。私は友達の家に行けなくなった。
 中学校、高校、何処かに行きたいと言うと、父親は「そんなところに行けるなら学校に行け」と言った。学年中にいじめられていることは両親に言った。父親はそれでも学校を強制した。不登校児のための施設に行きたかった。自力で近くの施設を探した。父親はそこに行くことを許さなかった。学校と、病院以外外出が許されなかった。父親は働かなかった。うつ病を理由に、ひたすら酒を飲み、毎日「死にたい、死ぬんだ」と暴れた。母親は……何をしていたんだ? 散らかった家。日の差さない家。足の踏み場のない家。栄養管理が全くできていない、お惣菜の揚げ物と淡水化物の食事。何をしていた? 母親は何をしていたんだ? 冷凍食品しかないお弁当。毎日繰り返される妄想との会話。夕方になるといつも叫んでいた。私は止めた。父親を、母親を、止め、宥めていた。私は看病人だった。食事を作った。作り方はネットで覚えた。母親が入院した。家事は全部私がやった。買ってきたお弁当やお惣菜は、父親は不平を言った。私はインターネットでレシピを調べて料理を覚えた。乱切りは最近まで出来なかった。インターネットの写真で分かる料理しか作れなかった。一人の台所。妹はテレビを見ていた。私は目分量で料理を作れるようになった。でも、とても太った。一つ、行ける場所が増えた。自転車で食材を買いにスーパーに行った。一人で行った。
 18歳くらい、父親が不倫し、家を出奔した。生活費は送られてきた。よく覚えていない。大学に行きたかった。
 19歳くらい、父親が交通事故で下半身不随になった。同居していた不倫相手に捨てられた父親は、母親と私に毎日介護に来させた。私は毎日夕方になると叫びだす母親の代わりに夕飯の支度をした。父親は酒に逃げた。服薬を拒否して、鍼灸師と名乗る宗教家に逃げた。大学にはいつの間にか、行きたい気持ちは消えた。妹は記憶にない、家庭すべてにそっぽを向いていた。
 20歳くらい、ダイエットをして劇的に痩せた。25キロ痩せた。この間数年間、一年間で4回ほど「抑うつ状態」で入院する日々を送っていた。自殺未遂も何度もした。入院すると数日で快方に向かった。入院した時だけ、私は母親に欲しいものが言えた。20冊ほどの漫画以外、特に何も欲しいと言わなかった。妹は記憶にない家庭すべてにそっぽを向いていた。
 21歳、父親が死んだ。多額の生命保険が残った。母親が入院した。私は見舞いに通った。洗濯物を持って帰った。母親が退院した。母親が今まで怠けていた服薬を管理した。何度も家を掃除した。すぐに妹がごみ溜めにした。母方の祖母伯母叔母に掃除を手伝ってほしいと頼んだ。一時綺麗になった。妹は「あたしの部屋にあたしのもの以外が置かれていた」と不満を言った。祖母たちはいつでも掃除に来るよと言ってくれた、母親は拒んだ。一日だけ遊びに行ったのもこのころだった気がする。
 22歳くらい。妹が下宿した。京都の大学。一時間半の通学時間が遠いと言って。母親は毎月15万仕送りした。妹はアルバイトをしなかった。母親と二人きりの家。毎日母親は狂人だった。叫んでいた。空いた妹の部屋を使いたいと何度も言った。伯母たちも母親にそう言った。母親は、「妹の荷物があるから」と毎晩妄想と喋っている自分の隣に私を寝かせた。外出すると、1時間ごとに電話された。私は自殺未遂をして肺炎になった。伯母たちは病院に泊まってくれた。母親は妹に、私が死の淵にある事を知らせなかった。一週間意識不明だった。意識が明瞭になってから、母親は妹に私の入院を教えた。妹は見舞いに来なかった。私にメールも電話も無かった。妹は冬物の発送を母親に依頼した。退院すると、私はそれらを荷造りした。
 23歳くらい、妹が下宿の更新手続きをしていなかったため、一晩の引っ越し期間で実家に帰ってきた。ごみ溜めの女子大生専用マンション。私は引っ越しを手伝った。京都に下宿が決まった時と同じように、私の予定は尋ねられる事なく、妹の引っ越しの手伝いとされた。
 思い出すのをやめる。ただ、小説は書けた。小説を書いていた。後はもう昨日の記事に書いてしまったから、思い出すのをやめる。
 
 20年ほど、家から解放されて遊べなかった。
 後、20年は遊ぶと決めた。
 毎日出かける。仕事、職場の休憩室での読書、図書館。
 でも足りない。友達と大阪、神戸、京都、東京。
 旅行に行きたい。夜行バス、格安航空を駆使して、一番安い宿を探して、ディズニーランド、沖縄、北海道、九州、東北、北関東、北陸、中部、中国、四国、母親からの電話を気にしない旅行に行きたい。
 費用が足りない。時給500円。友達はみんな大人だ。
 母親から遊ぶお金を貰う。とても悪い事のような気がする。母親は私が、二週間に1回、1万円を要求しても、痛くもかゆくもない資産を持っている。二週間に一回? 私は疲れる。そんなに多くない。余ったお金は返す。同人は自分のお金でやる。切り詰めた生活をする。貯金もする。働き続ける。でも、大人が親に遊ぶお金を貰うのは悪い事のような気がする。
 母親は体調が悪くなる。今日、叔母が祖母の家に行くのを、「あたしが行くからいいよ」と言ったのを、母親は断った。オーバーワークだ。体調が悪い母親を置いて、私は遊びに行く。妹と重なる。妹と同じように悪い事をしている気がする。でも、母親に何かしてやっても、返ってこない。私は怨むだけだ。
 例えば、母親が入院する。私は見舞いに行かない。毎日遊ぶ。病院に洗濯ものが溜まる。必要なものを持ってきてくれと言われて、遊ぶからと断る。母親は私に金だけ取られる存在となる。
 ぞっとするような悪徳な気持ちがする。20年、悪徳を犯す気がする。人の心が離れていくような、そんなダメな人間のような気がする。
 妹の二回の借金を母親は払った。妹のヨーロッパ旅行30万円に、小遣いを10万円やった。それを私は悪徳だと思っていなかったか? 妹はヨーロッパを楽しんだ。私は家で母親の世話をしていた。何度も「遊ぶ金くらい自分で払え」と考えていた。
 父親の生命保険だというのが、私の心を更に迷わせる。誰も働いて得たお金ではない。
 もう嫌だ。私は遊ぶお金を母親から貰うと決めた。切り詰めた遊び方をするとも決めた。酒は付き合い程度。煙草もギャンブルもやらない。同人の金は自分で払う。働く。母親は金がある。誰も困らない。でも、私は道徳として、ダメな気がする。
 
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浮草堂美奈

Author:浮草堂美奈
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サイト キクムラサキ式
サイトに小説掲載中。
同人誌即売会にも、ダークファンタジー小説を引っ提げ出没します。

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