ヘヴンズ・ドアー72話「永久に生きよ」アップ

 70話からHP制作ソフトの不調により、ブログにて連載させて頂いております。読みづらくてまことに申し訳ありません。
 そして、同じくソフトの不調により、リンク先にスクロールバーが表示されなくなっていました。こちらも重ねてお詫び申し上げます。

 今回で絶対中立編終了です。
 おおっきっく物語が動きますよー!
 今回が初見の方は、是非サイトの方の小説もご覧くださいませ!
 


 今日の晩ごはん
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 にんじんしりしり 菜の花のおひたし 納豆 おみそ汁

ブログ拍手ありがとうございました!
2月13日19時
貴方にはっぴーばれんたいんv


 ……生きている?
 最初に痛感した事はそれだった。
 痛みも無く、苦しみも無く、自分がある。
 目の前には翠柳がいる。
 否。
 自分は何処にいる?
 国軒は徐々に思い出す。
 そうだ。
 自分たちはあの尼僧の後ろから生えてきた、巨大な樹木に呑まれた。
 茶色い幹や緑色の葉が自分たちに食い込み、飲み込んで行った。
 翠柳は目を覚まさない。
 翠柳の下には弟や妹たちが同じように、緑色の空間にただ浮かんでいる。
 紅玉は?
 紅玉だけがいない。
 だんだん瞼が下りてくる。
 そこで気づく。
 何も聞こえない。皮膚の感覚がない。匂いが一切分からない。
 舌をわざと噛んでみたが、血の味もしない。
 五感が―無い。
 背筋を寒気が走る。
 五感がなく、意識だけがある。
 あの、シスター・エラとか云う女は言っていた。
「永久の命を!」
 永久を過ごすのか?
 五感全てを奪われ、この緑色の空間で永久に?
 そんなものは、究極の孤独じゃないか!
 目の前に居る愛する奴らに、全く気付くことも出来ず、意識だけがあるんなんて!
 逃れようと更に下を見る。
 水があった。
 清らかな水。
 透明の水。
 底は見えない。ただ、清らかな水がひたすら流れ続けている。
 あれがスイスの水源か。
 それを認識したのを最後に、瞼は完全に下りた。
 もうじき体も動かなくなるのだろうか。
 どんどん感覚が無くなって行っている。
「大哥……」
 声!?
 必死に返事しようとするも、口が動かない。
 翠柳だ!
「大哥……」
 あの妹も此処に囚われるのか!?
 永久の孤独に囚われるのか!?
 幼い頃より毒を食わされ、殺人人形と化してヴァルハラにやって来た哀れな子!
 誰よりも優しく、弟妹の世話をして、兄達に笑いかけた子!
「大哥……」
 翠柳!
「大哥……我(ワタシ)……あそこに沈みたい……」
 それっきり声は途切れた。
 もう何時間経ったのか。
 声は聞こえない。
 きっと何時間なんて単位も感覚が無くなって行くのだろう。
 世界樹(ユグドラシル)、それは、永久の牢獄。
 我(ワタシ)は……何を憎めばいい。
 幾人も手にかけた自分自身か。
 自分を切り捨てた祖国か。
 あるいはこの世界か!
 動いているのか分からない腕で、あると思われる紙包みを取り出した。
 そして、水に投げ入れた。
 我は一滴の毒なり。
 いずれ麒麟をも殺す一滴の毒なり。
 それっきり、意識は途絶えた。

 ヘヴンズ・ドアーの店内に一本の針が飛んだ。
 それは、コーヒーを飲むサマンサの目前を通り、壁に突き立ちびりりと震えた。
「店長……」
 ゆっくりと黒いレザーカットの少女が姿を見せる。
 その顔は、悲しみか怒りか分からない表情に浮かんでいた。
「紅玉、如何したのかしら?」
 カップを置くと、サマンサは振り向く。
「知っていたか?」
「何を?」
「ふざけるな!」
 紅玉は叫んだ。
「オマエは知っていた! 国家を裏切ったものは、ヴァルハラという世界の咎を受け、世界樹(ユグドラシル)に閉じ込められる事を!」
「そうね、知っていたわ。あの、シスター・エラは、世界樹(ユグドラシル)の獄卒のヴァルキリーですもの。アルベルタの銃の弾を抜いちゃうのは予想できた範囲だし。ふふ、彼、恨んでるでしょうね。で、どうなの? 私を殺す?」
 サマンサの微笑みに怒声で返す。
「オマエは我には殺されない! オマエは”どんな攻撃も通さない”盾を持つヴァルキリー! 戦士じゃない! 神であるオーディンの僕!」
「よく調べ上げたわね。昔取った杵柄という奴かしら」
「ああ、調べ上げたある。我達が無事だったのは、このヘヴンズ・ドアーの店員だけは例外だからね」
「そうよ、テロリストって調べるの得意ね」
「テロ……!?」
 外から聞こえた驚きの声に、サマンサは微笑みかける。
「入っていらっしゃいな」
 おずおずと入ってきたエミリーと依子に、紅玉も振り向く。目を見開いて。
「すみません、立ち聞きなんてしてしまって」
「いいのよ、依子。誰だって気になるわ。この世界は自分たちが存在する世界だもの」
 サマンサは足を組んで、言った。
「紅玉はね、阿片戦争当時、イギリスの命令で各地で要人の殺害、建築物への放火を繰り返した、まだテロと云う言葉があの国に無かった時代の、筋金入りのテロリストよ」
 軽蔑した? と問われ、慌てて首を振る二人。
「ね。あなた達ならそんな事で紅玉を嫌いになったりしない、此処はそういう者が集まる世界」
 すっと、立ち上がる。
「このヴァルハラで繰り返される戦争、最後に生き残った国が握る、新たな世界の覇権を賭けての。これは”新たな世界を作る”というオーディンのゲームに過ぎないわ」
「ゲーム!?」
「ええ、遊戯よ。人を殺してもそれを”当たり前”と捉える狂人を集めた遊戯。私たちはゲーム盤のキャストに過ぎない。あなた達は「ヘヴンズ・ドアーの店員の戦士」というキャスト、私は「ヘヴンズ・ドアーの店長のヴァルキリー」というキャスト。それがこのヴァルハラと云う世界」
 目を見開いたまま、三人は言葉も無い。
 サマンサは優雅な仕草で店内に戻ろうとする。
「お待ちください!」
 絞り出すような叫びが響いた。
「どうしたの? 依子?」
 目は暫し閉じられ、そしてきかと据え依子は言った。
「私たちは、この遊戯に勝ってみせます!」
「依子……」
 サマンサは珍しく、本当に初めて見た表情をした。
 つまりは、驚いたのだ。
「よく言ったぜ依子! あたしらの代弁がやけに上手くなったじゃねえか!」
 エミリーが依子の肩を抱き寄せる、ついで紅玉も。
 いつもは嫌がる紅玉が、今日だけは肩を抱き寄せられた。
「我等、その”キャスト”を続けてやるよ。そしてにやけ面してるそのオーディンとやらの、面目ぶっ潰してやるある」
「Oh! 顔面もぶっ潰そうぜ! 神様だかなんだか知らねえが、鼻を潰されて痛くねえやつはいねえ!」
 驚愕の顔が徐々に和らいだ。まるで、望みどおりの物が手に入ったかのように。
「じゃあ、明日の準備をしましょう。新しいチョコレートが入ってるの」
「はい!」
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浮草堂美奈

Author:浮草堂美奈
小説書きが何か日々喋ってます
サイト キクムラサキ式
サイトに小説掲載中。
同人誌即売会にも、ダークファンタジー小説を引っ提げ出没します。

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