fc2ブログ

読書はたのし「川端康成随筆集」(川端康成)

「推しの顔がいい」
 ヲタク女の悲鳴である。
 喜びを感じて悲鳴とかおかしいだろ、とお思いかもしれない。
 だが、これを発しているヲタク女は、アドレナリン血圧肺機能ホルモンバランスが全解放状態なんである。
 生命の危機だ。ならば当然悲鳴である。
 舞台や映画関係でよく発せられる悲鳴だ。
「女は俳優の顔から入るからダメ」と、おイキリになる方もおられるらしいが……。
 何を正気ぶっているのだ。
 趣味なんぞ、全ジャンルバミューダトライアングルではないか。
 入ったら船ごと消える海域だ。
 しかも、こちらは入らなくても生命維持活動は可能だ。
 マトモな神経で入るものか。
「確かにあそこは危険だ。でもあらゆるものが手に入る。で、入り口は目の前。おわかり?」
「俺はつねに安全第一を座右の銘にしていた。つまりは……全部俺のせいでこんなトコにいるってのは言いすぎだろ?」
 こういうことだ。
 顔というわかりやすい入り口から入ろうが、別の場所から入ろうが、どっちにしてもジャック・スパロウだ。
 海賊に貴賤はない。おわかり?
 では、わたくしの顔から入った作家を見てほしい。
 
読書はたのし「川端康成随筆集」
 
 右の方だぞ?
 川端康成先生の方だぞ?
 手元の「川端康成・三島由紀夫往復書簡」から写メった写真である。
 生憎とまだ積んであるのでコメントできないが、タイトル通りの1冊だ。
 一応リンクを貼らせてもらう。現在紙媒体が品薄なので、今回のリンクはなるべくKindleを貼るとする。

 お察しの通り、左は三島由紀夫である。ノーベル文学賞受賞決定の翌日の写真だ。
 余談。
 受賞が決定してすぐ、タキシードに薔薇の花束を持った三島先生が、川端先生宅に駆けつけたそうだ。
 お写真を見る限り、川端先生ご本人はうれしかったようだが……。
 わたくしが奥様だったら、ドン引きする。
 
 閑話休題。もう一度写真を見ていただきたい。
 圧倒的目力、くちばしのような口、鶴のような痩身。
 かわいらしいバジリスクだろう。
 推しの顔がいい。視線で死ぬ。死んだ本人が言うのだから間違いない。
 学生時代、ジャニーズ以外を答えたら殺すという鉄の意志に気づかず……。
「好みのタイプってどんな子?」に「川端康成」と答えていたのだ。
 小中高、すべてで死んだ。ガストン(美女と野獣)と呼んでくれ。
 
 子どものころは純粋に顔がいいだけで死んでいたのだが、長じては作品の方でも死ぬようになった。
 あなたにもぜひ、顔も中身もかわいいことを堪能していただきたい。
 そこでこの1冊。
「川端康成随筆集」(川西政明編)
 

 川端先生の随筆(エッセイ)を集めた1冊である。
「文壇の総理大臣」と称された川端先生。
 様々な文豪との思い出が収録されている。
 長生きすると多種多様な人と交流できるチャンスが増える。
 たくさん死ぬのは避けた方がいいかもしれない。
 1つ抜粋しよう。徳田秋声先生との思い出。
 病床の徳田先生を見舞った思い出だ。徳田先生との最後の思い出でもある。
『その日のことを、特に修正先生の言葉を、私は記録しておきたい感動を受けたが、なにか後日のためという気持がまざりそうだといやなので止めた』
 3行後にこうある。
『藤村氏のことを、藤村氏の死に誘われて思う御自分のことを、短い時間話されたのだが、私はその言葉を覚えていないで、沈痛深厳な印象だけが残っている』
 記録しとけよオオオオオォッ!
 感動したのに覚えてないのか!
 忘れちゃったのか!
 戦後、徳田先生に再び筆を執らせたのはアンタだろ!
 っていうかアンタどの文豪との思い出にも「忘れてしまった」の一文あるよな!
 文壇じゃない総理大臣だったら、国会大乱闘だぞ!
 フリーダムすぎる! かわいい! 好き! ときめき☆内閣総辞職!

 

 またしても死んだので、ワンクッション置かせていただいた。
 このように圧倒的忘却率がかわいい川端先生。
 しかし、「伊豆の踊子」を書いた当時のことはよく覚えておられる。
 
 ただ……「伊豆の踊子」本文に関しては別のようで……。まあ……その……。
 ほら、「伊豆の踊子」ラストでうなずいたのは「私」か踊子か? と、いう問いで授業が紛糾するというイベントがあって……。
 失礼。それは高偏差値校の話だ。野犬収容所卒のわたくしには都市伝説にしか思えない。
 まあ、なんかそういうもめ方をした人からの問い合わせがよくあったそうだ。
「そんなの踊子に決まってるじゃないか」
 ちょっと不服に、伊豆の踊子を読み返してチェックなさる川端先生。
 わかるー。自分が書いた内容って忘れちゃいますよねっ。
 わたくしも数メートルも離れた位置から、アイコンタクトのみで対話するオークションSM小説を書いたんですけどね。
 書き上がるまでMちゃんが眼鏡かけてたの忘れてて、無理やりごまかしたんですよぅ。

 突然のpixivリンク
 
 また死んだのでワンクッションだ。
 川端先生も一緒にされたくないであろうし。
 とかく、チェックなさったんである。
 そして葛藤なさったんである。
 結論を出されたんである。
「どっちだかわからん」
 4ページにわたって、どっちだかわからん理由を記しておられる。
 最終的に『もし仔細にみれば、全篇ががたがたして来そうである』で結んでいる。
 自信を持って自信喪失なさっている!
 いや、もう正直が一番ですよねせんせっ!
 この話だけじゃないですもん! もう人生全般ほんっと正直!
 夭折した芸術家に、生前作品を1つもらってるんですよ川端先生。
 あ、この本に収録されている話なんですけどね。
 それがまあ戦災やらのゴタゴタで作品が四散しちゃったんですよ。
 で、もらった作品がヤバイくらい傑作で。芸術家もあげるのもちょっと渋るくらい傑作で。
 戦後展覧会を開催したんですけど。
 まあ作品が四散しちゃってるのはしょぼんじゃないですか。しょんぼりよんじゃないですか。
 でね、川端先生はそのもらった傑作を見ながらこう思うんですよ。
「もらうならやっぱり良いものがいい」
 素直ーーーーッ! 正直ーーーーッ!
 そこラッキーだったって言っちゃうんだかわいいいーーーッ!


 
 失礼。話を戻そう(叩きつけた頭部の血を拭いながら)
「伊豆の踊子」には、主人公(20代男性)が見知らぬ学生のマントの中に潜り込ませてもらって寝るシーンがある。
 落ち着け。幻覚じゃない。その麻酔をしまえ。
 確かにBLでもなかなかないシチュエーションだ。
 それでも、ホントに「伊豆の踊子」にはあるのだ。
 エロい理由でもぐりこんでいるのではない。
 親切にされているだけだ。
 そこまでの親切。エロ目的よりヤバイ気がする。
 この随筆集で知った。
 驚愕した。
 実話だった。
 川端先生、知らねえ学生とマントをシェアして寝たことがあった。
 2回あった。
 だから幻覚じゃない。
 川端先生、マントシェアという親切を2回も受けていた。
 ここまでくると読者も「さとり」みたいな顔になってくる。
 いくら傷心中だからって、マントをシェアするだろうか。
 っていうか何者だ、その学生。
 
 この随筆集の魅力はこういうところなのだ。
 川端先生はかわいい。
 ちょっとアレなところがかわいい。
 つられて自分に関しても「まあ、ちょっとぐらいアレでもいいか」とか思ってしまう。
 かわいいは正義。今さらながら名言だ。

 だがしかし。
 三島由紀夫。てめーは「ちょっと」じゃねえぞ。この本を読むかぎり、ぜんぜん「ちょっと」じゃねえ。ちょっとじゃねえかんな!

 ワンクッションが頻繁に必要になる、「川端康成随筆集」いかが?

 評価、拍手、ブクマ、ふぁぼ等ありがとうございました!


 Kindleにて著書販売中! https://amzn.to/3aV8fWx

 お仕事のご依頼はこちら youkai@m3.kcn.ne.jp



スポンサーサイト



プロフィール

浮草堂美奈

Author:浮草堂美奈
小説書き。
オンライン掲載の更新情報、オフラインの出没販売情報、まほろばな日々等を掲載しております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード